アレルギー外来とは
アレルギー外来では、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・花粉症の治療(アレルゲン血液検査、舌下免疫療法を含む)を行っています。
気管支喘息
気管支喘息とは、アレルギーによる慢性的な炎症によって、気管支が狭くなる結果、呼吸がしづらくなり、息を吐くときにゼエゼエ、ヒューっと音がする喘鳴(ぜんめい)という症状が現れる病気です。小児期に発症することが多いですが、成人になってから発症することもあります。自覚症状がない時でも気管支の慢性的な炎症は続いており、この慢性的な炎症が、季節の変わり目や風邪を引いたとき等をきっかけに悪化し、喘息発作と呼ばれる息苦しさや咳がひどくなる症状が現れます。従って、喘息発作時の治療はもちろんですが、発作がない無症状の状態でも治療を継続することが大切です。無症状の状態の時も治療を継続することで、発作の頻度を減らしたり程度を改善したりすることができます。治療はステロイド吸入薬が基本となり、状態に応じて気管支を拡げる薬を併用します。
咳喘息との違い
咳喘息は気管支喘息とよく混同され間違われることがありますが、咳喘息と気管支喘息は異なる病気です。咳喘息は風邪をひいた後に咳が長期に長引いた際に診断される病気です。原則として風邪をひいてから咳だけが4週間以上継続する場合に疑います。治療は気管支喘息と同じ治療を行い2週間程度で治ります。原因としては感染を契機に気道過敏性が亢進したためと言われています。一方、気管支喘息にとって風邪はあくまで喘息発作を引き起こす誘因の一つにすぎません。気管支喘息の原因はアレルギーによる慢性炎症ですので、長期的な治療管理が必要である点が咳喘息と大きく異なります。ただし、咳喘息から典型的な気管支喘息に移行するケースもあります。以前、咳喘息の診断・治療を受けたが何度も同じような経過を繰り返しているという方が、実は気管支喘息であったというケースもあります。気になる方はご相談ください。
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎とは、鼻水やくしゃみを繰り返す症状をきたす病気で、鼻づまりを伴うことがあります。花粉症も症状は同じですが、花粉症はスギやヒノキなどの花粉が原因であるのに対して、アレルギー性鼻炎とは、ダニやハウスダスト、カビ・動物の毛など花粉以外も含めた様々なアレルギーの原因から引き起こされる鼻炎のことです。治療は抗アレルギー薬の内服を基本とし、状態に応じてステロイドの点鼻薬を用います。アレルギーの原因(アレルゲン)除去も大切です。特に花粉症の飛散時期には、マスクをする、鼻うがいをする等の基本的な花粉症対策を行います。しかし、日常生活を送りながら、アレルゲンの完全除去はなかなか難しいことが多いのも事実です。そこで、適切な基本的治療を行っても、鼻炎症状が強い方に対して、当院では、スギ花粉症またはダニによるアレルギー性鼻炎と診断がついた方に対して、アレルギー舌下免疫療法を行っています。これは、アレルゲン(アレルギーの原因物質)を少量ずつ体内に取り込み、体を慣らしていくことで、アレルギー反応を抑える治療法です。
アレルギー症状でお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。
舌下免疫療法とは
舌下免疫療法は、スギ花粉症やダニによる辛いアレルギー性鼻炎の症状に対する治療です。この治療では、スギ花粉やダニの成分を少量ずつ舌の下に投与することで、アレルギー反応を緩和し、徐々に症状を改善していきます。
従来の皮下免疫療法では、治療薬を皮下に注射する方法が一般的でしたが、舌下免疫療法では治療薬を舌の下で服用することが可能になり、自宅での治療が可能です。
現在、この治療法はスギ花粉症とダニアレルギー性鼻炎に対して保険適応となっています。
舌下免疫療法の方法
舌下免疫療法では、アレルゲンをごく微量に含んだ薬を舌の下に置き、そのまま1分間保った後に飲み込みます。その後、5分間は飲食やうがいをしないようにしましょう。
薬を飲み込むことで喉のかゆみが出る場合は、1分間置いた後の吐き出しをおすすめすることがあります。1分間舌下に置くことで治療効果が発揮されるので、飲み込まずに吐き出しても効果には影響しません。これを1日1回、少なくとも3年間以上、毎日続けます。
スギ花粉によるアレルギー治療の場合、薬の服用は花粉の時期を避けて6~12月頃からスタートします。花粉が飛ぶ時期に治療を始めるとアレルゲンの吸収量が多く、副作用が出やすくなるためです。
効果がではじめる時期
効果の実感が早い方では服用開始から4~5か月後、遅くとも1年後には多くの方が効果を感じるといわれています。花粉症の症状が完全に治まる、緩和されるなど治療効果を感じる方の割合は70~80%ほどです。つまり約20%の割合で効果を感じない患者さんもいるため、全ての方に効果があるわけではありません。
舌下免疫療法の期間
治療は通常3~5年間続ける必要がありますが、効果が期待されるタイミングは個人によって異なります。スギ花粉症では初めての花粉飛散シーズンから、ダニアレルギー性鼻炎では治療開始数か月後から改善が見込まれ、最大の効果(約80%)を得ることができるとされています。
舌下免疫療法の対象年齢
いずれも5歳以上の方が対象です。
※ご注意:当院では原則として16歳以上を対象とさせて頂きます。薬剤は舌の下に1分間保持する必要があるため、お子様の場合は、治療の可否について事前に医師とご相談ください。また、高齢の方も治療の対象ではありますが、一般的に65歳以上では治療効果がやや低下する可能性があります。
舌下免疫療法の開始時期
スギ花粉
治療の新規開始は6月から12月までの期間に限られます。スギ花粉が飛散する1月から5月末までは、副作用のリスクを避けるため、新たに治療を始めることはできません。
ダニアレルギー
年間を通じて、いつでも治療を開始することが可能です。
舌下免疫療法の流れ
1事前検査と治療説明
舌下免疫療法を始めるには、スギ花粉やダニに対するアレルギーの有無を確認する検査が必要です。
当クリニックでは39種類のアレルギーの原因を調べる血液検査を行います。
この日は、治療の概要説明と検査のみで終了となります。
2初回投与
血液検査の結果と治療内容の説明後、医師・看護師の指導のもと、初めての服薬をクリニック内で行います(※血液検査でスギやダニに対する陽性反応が確認された方が対象です)。
服薬後は、副作用の有無を確認するため、30分ほど院内で待機していただきます。時間に余裕のある日にご来院ください。
※初回投与の受付は、午前は11:00まで、午後は17:00までとなります。
3定期通院と処方
治療期間中は、経過観察とお薬の処方のため、月に1回の通院が必要です(治療開始直後のみ1週間後に再診があります)。
舌下免疫療法の注意
治療が受けられない方
以下に該当する方は、舌下免疫療法を受けることができません。
- β遮断薬を使用中の方
- 妊娠中、授乳中の方、および65歳以上の方
- コントロールが不安定な喘息をお持ちの方
- 以下の疾患がある方:悪性腫瘍、自己免疫疾患、免疫不全症、重度の心疾患・肺疾患、管理困難な高血圧、慢性感染症
- ステロイド薬や抗がん剤を使用中の方
治療を開始する前に、これらに該当しないかをあらかじめご確認ください。
※適切な治療で状態が安定している喘息や高血圧症の方は治療を受けることが可能です。
事前にご確認ください
- 鼻炎の原因が本当にスギ花粉やダニであるか、検査で確認する必要があります。
- 毎日、舌の下に薬を投与し、3~5年の長期治療が必要です。
- 通院は月1回(治療開始直後は1週間後)となります。
- スギ花粉症の方は、1月~5月の間は新たに治療を始めることができません。
- すべての方に完全な治癒効果が期待できるわけではありません(有効80%、無効20%)。
継続的な治療が可能か、よくご検討の上でご相談ください。
舌下免疫療法の副作用
舌下免疫療法には、アレルギーの原因となるスギ花粉やダニの高濃度製剤を使います。そのため、体の免疫機能が過剰反応してアレルギー症状が出る場合があります。
軽度な副作用
舌下免疫療法の治療でもっとも多くみられる副作用は、口の中のかゆみや腫れなどです。特に、薬の投与部位である舌の下が腫れる症状は、治療患者の約10%にみられるといわれています。ほかにも耳のかゆみや唇の腫れ、喉の刺激感や違和感、吐き気、頭痛などが起こる可能性があります。
これらの副作用の多くは治療薬の服用後30分以内に起こり、1~2か月ほど経過すると気にならなくなることが多いといわれています。ただし、気になる症状などがある場合は、医師に相談するようにしましょう。
なお、スギ花粉の舌下錠を服用する場合は花粉が飛んでいる時期を避けましょう。アレルゲンの過剰摂取により、副作用が増強する可能性があります。
重度な副作用
服用によってアナフィラキシーショックを引き起こす場合がありますが、ごくまれです。アナフィラキシーショックとは医薬品などに対する急性の過敏反応により、蕁麻疹(じんましん)や嘔吐、息苦しさ、突然のショック症状などがみられることです。そのため、初回の服用は基本的に医療機関で医師の監督の下に行われます。
このような副作用を避けるためにも、体調の悪い日の服用や、服用前後2時間は激しい運動、アルコール摂取などは避け、決められた量をスケジュールどおりに服用することが大切です。
舌下免疫療法の効果は
一生続く?何年もつ?
舌下免疫療法は一生続ける必要がある治療ではありませんが、終了後は徐々に効果が薄れていく可能性があります。ただし、数年間(おおよそ3~5年)しっかり継続することで効果の持続が期待でき、万が一数年後に症状が再発した場合でも、再度1~2年程度の治療を行うことで、再び効果が得られるとされています。