過敏性腸症候群

過敏性腸症候群(IBS)とは

過敏性腸症候群 過敏性腸症候群とは、精神的なストレスにより下痢や便秘、腹痛など腸の症状が一定のパターンで繰り返される病気です。医学的には機能的な疾患と呼び、進行性ではありませんし、命に関わる病気では全くありませんので心配いりませんが、日常生活の中で慢性的に症状が続くので、さらにそれがストレスとなり、生活の質(QOL)が低下します。
 人間はストレスを全く感じずに生きていくことは不可能であり、常に何らかのストレスを感じながら、うまくバランスを取っています。しかし、ちょっとしたきっかけでバランスが崩れ、ストレス負荷を強く感じとってしまうと、それが身体症状として現れることがあります。過敏性腸症候群はそれがおなかの症状として現れる病気です。
 非常に遭遇頻度が高い病気であり、皆さんも今までに一度は経験したことがあるかもしれません。男女ともに多く、経過としては、年単位で悩んでいる方もいれば、数週間、数か月で自然におさまっていく方もいます。誘因となっているストレスが過ぎ去っていったか、そのストレスに自然と適応し、ストレスと感じなくなってしまったのか、人それぞれで経過は異なります。
 治療法は、病気の性質上、ストレスに向き合い、ストレス対処について話し合うことが基本ですが、同時に、おなかの症状に合わせたお薬を処方することで、身体症状の軽減もはかっていきます。

過敏性腸症候群の診断

診察 過敏性腸症候群だけに特有の症状はありませんが、お話を伺い、エピソードから典型的であれば、診断は容易です。この病気の診断自体に大腸カメラ検査は必須ではありません。
ただし、過敏性腸症候群の症状が実際にあっても、さらに以下のような症状も伴っている場合は要注意です。

  • 血便がある
  • 体重減少がある
  • 食欲低下が続いている
  • 発熱がある
  • 自覚症状で目が覚めるまたは睡眠中にも認められる
  • 大腸がんのリスク因子に複数当てはまるが、最近1-2年間は大腸カメラを受けていない

 これらの症状が一つでも当てはまる場合は(医学的にはRed flagsと呼び、要注意の兆候とされています)、大腸がんなどの重大な病気が隠れている恐れもありますので、大腸カメラ検査を受け、別の病気がないかどうかを一度は確認しておいた方がよろしいかと思います。

 

過敏性腸症候群の症状と対処法

過敏性腸症候群の症状は大きく以下の3つに分けることができます。

下痢型

 下痢型では、週の始まりの月曜日の朝や、自宅から学校や仕事に出かける直前、通勤のため車で運転中、満員電車で移動中、会議中、授業中、学校などのテスト前やテスト中など、なかなかトイレに行きづらい状況や、時間に追われているとき、緊張感がある場面になると、急におなかが痛くなり(渋り腹、おなかが渋る)、便意をもよおし、水様便が出てしまうというエピソードが典型的です。我慢したくてもコントロールできないので余計に心配になり繰り返し便意を感じやすくなってしまう悪循環になりがちです。どちらかというと男性に多い傾向があります。

対処法

 お薬の治療は、毎日飲んでコントロールする薬と、外出先などで急に必要な時に飲む頓服薬があります。近年、セロトニンという物質を調整することで症状をコントロールする優れたお薬が登場し、慢性的な症状で悩む患者さんにとっては喜ばしい効果が得られています。あとはストレスに向き合い、ストレスの対処について話し合うという点ももちろん大切です。普段の生活では、トイレに行く時間も計算に入れて時間に余裕を持った行動パターンをとることも現実的な対策のひとつかもしれません。

便秘型

 便秘型では、便意や渋り腹はあるものの、トイレに行ってもなかなか排便できない、もしくは、小さくてコロコロした便しか出てこないといった症状が典型的です。学校や職場など周りに人がいる環境では緊張感があり、安心してトイレにいけず、1日の中でも自宅に帰宅後や、休日になるとようやく排便が得られます。旅行中は便が出ないので、旅行期間が長いと困るという人もいます。便秘型は“(無自覚であっても)緊張すると出ない”という、下痢型とはある意味で逆のパターンです。便秘が長く続くとガスも溜まりやすくなり、おなかの張りで苦しくなったり、気分がイライラしてしまったり、吹き出物が出たり、悪循環になりがちです。どちらかというと女性に多い傾向があります。

対処法

 お薬の治療は、一人一人に合わせた下剤の調節が主体となります。下剤は最近さまざまなタイプのお薬が登場し、選択の幅が広がりました。ご希望の方には漢方薬も処方できます。下剤自体は長期に服用しても適切に服用すれば依存性があったり有害だったりすることはありませんので安心して上手に下剤を活用してください。長期的には、食生活を見直してみたり、生活リズムを整え、どこかで緊張しない状況・ルーティンを作り、その中で排便習慣をうまく作っていくことができたりすれば、改善が期待できるかもしれません。

交代型

交代型では、下痢型と便秘型いずれの症状も持ち合わせており、下痢と便秘が交互に現れるという特徴があります。

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