胃がん

胃がんとは

胃カメラ検査 胃がんとは、胃壁内側の粘膜の一部ががん細胞となったものです。進行すると粘膜の奥深くに広がっていき、胃壁を超えて周囲の臓器に直接浸潤したり、腹腔内にがん細胞がちらばってしまったり(腹膜播種と言います)、リンパ液や血流に乗って離れた臓器へがんが転移したりします。
 胃がんの発症年代は40歳代から50歳代で徐々に増え始め、60歳代から80歳代にかけて最も多い傾向があります。男女比は2:1で男性の方がやや多いです。
 胃がんは日本における罹患率が、男性では前立腺がんについで第2位、女性では乳がん、大腸がん、肺がんについで第4位であり、昔から患者数が非常に多いのが特徴です。2018年の統計では男性の10人に1人が一生のうちに一度は胃がんになると報告されています。
 しかし、最近10年間で、胃がんによる死亡者数はやや減少傾向にあります。これは2012年にピロリ除菌治療が保険適応になり一気に普及した影響と、早期胃がんに対する早期発見率の向上と、早期胃がんに対する内視鏡治療(内視鏡的粘膜下層剥離術;ESD)の普及による効果であると考えられます。また近年の日本の若年者層はピロリ菌感染率が減少傾向であり、感染率の低下と除菌治療の普及により、最終的に日本人にピロリ菌感染者がいなくなったら、日本の将来は胃がん自体が稀な病気になる可能性もあるかもしれません。
 とはいえ、現在においても日本で非常に多くの胃がん患者さんがおり、年間で4万人以上が亡くなっているという事実があります。日本人の99%を占める慢性胃炎から発生する分化型胃がんは定期的な胃カメラ検査にて早期胃がんの段階で発見が可能です。早期胃がんであれば内視鏡治療で治ります。従って、今後も当院では胃腸専門のクリニックとして、ピロリ除菌治療および除菌後の慢性胃炎に対する年1回の定期的な胃カメラ検査フォローによる適切なサポート体制、正確な診断による早期胃がんの早期発見によって早期治療につなげることを通じて、皆さんの健康に貢献していきたいと考えております。

胃がんの原因

 中国、朝鮮と同じ日本のような東アジア地域では、自然界にピロリ菌が蔓延しており、世界的にみて胃がんが多い地域として知られています。幼少期にピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)が胃に感染することによって胃が持続的に炎症を起こし、慢性胃炎(萎縮性胃炎)を生じます。最初は胃の下部(前庭部と言います)から胃炎は発生し、徐々に胃全体に範囲が広がっていきます。加齢とともに数十年をかけて、この慢性胃炎(萎縮性胃炎)を発生母地として胃がんを発症します。日本の胃がんの99%はこの過程を経て発症します。年単位でゆっくりと発生・進行していきますので、年1回の定期的な胃カメラ検査を受けていれば、もし胃がんが見つかっても早期胃がんの段階で発見することが可能であり、早期胃がんであれば、内視鏡治療にて根治させることが可能です。 
 なお、ピロリ菌は早めに除菌しておくと胃炎の範囲の進展を防ぎ、炎症を鎮静化させ、胃がんの発生率をやや低下させると言われています。ここで強調しておかなければならない点として、除菌後も胃炎から胃がんは発生します。従って、ピロリ除菌後も1年に1回定期的に胃カメラ検査を受け、胃がんがないかどうかをチェックしておきましょう。また、ピロリ除菌は胃潰瘍・十二指腸潰瘍の予防にもなるため有用です。当院では尿素呼気試験というピロリ菌の検査機器を導入しており、検査当日に検査結果が判明します。ピロリ菌を見つけ次第、すぐに除菌治療が可能ですので、お気軽にご相談ください。
 残りの1%の胃がんはピロリ菌との関連が指摘されておらず、主に2つのタイプがあります。
 1つ目は食道胃接合部がんで、60歳以上の高齢者に多く、稀に30-40歳代の若年者がいます。発症様式が不明で、初期段階の病態もくわしく分かっていません。そのため、多くは進行がんの段階で発見されることが多いです。
 2つ目はスキルス胃がんです。胃壁を硬く厚くさせながら広がっていく特殊なタイプで、進行が早く、腹膜播種を起こしやすい特徴があります。また内視鏡では診断が難しい場合もあります。こちらも発症様式が不明で、初期段階の病態がくわしく分かっていません。そのため、症状があって見つかったときには進行していることが多く、治りにくいがんです。全年齢層にみられますが、ピロリ菌未感染の20~30歳代の若い女性に発症することがやや多いという特徴があります。
 また、胃がんに関連する生活習慣としては、喫煙、塩分の過剰摂取が指摘されています。いずれも動脈硬化の進展にも関与しますが、胃がん予防の観点からも禁煙、減塩が勧められます。

胃がんの症状

 胃がんは早期の段階では自覚症状に乏しく、進行がんになっても自覚症状が乏しいことも珍しくありません。
 代表的な症状は胃の痛み・違和感・不快感、胸やけ、吐き気、食欲不振などです。進行してからだと体重減少、貧血、吐血や黒色便といった出血症状を呈することもしばしばみられます。これらの症状は胃潰瘍などの症状とも似ているため、胃がんかどうかを見極めるためには胃カメラ検査で胃の状態を確認する必要があります。
 胃がんは早期発見と早期治療が非常に大切です。胃がんのリスクがある人(ピロリ菌に感染したことがある)、上記のような自覚症状がある人は、胃カメラ検査が勧められますので、当院へお気軽に相談ください。

代表的な症状

  • 胃(みぞおち付近)の痛み
  • 胃の違和感・不快感
  • 胸やけ
  • 吐き気
  • 食欲不振
  • 黒色便
  • 体重減少  など

当院の胃がん検査

胃カメラ検査 一般的に、胃がんの診断は胃カメラ検査で行います。自覚症状がある人、胃がんバリウム検診で陽性だった人、胃がんリスク検診(ABCD検診)でピロリ陽性だった人、ピロリ菌を除菌したことがある人は、胃カメラ検査の保険適応があります。
 胃カメラ検査では胃の中を見て、疑わしいところがあったら、生検(胃の粘膜の一部を採取する検査)を行い、病理組織検査でがん細胞の有無を詳しく調べます。生検結果は2週間後の再診外来でご説明しています。
 なお当院では、世界でも最先端のオリンパス社製内視鏡システムEVIS X-1を導入しており、高画質の画像処理で高解像度の画像による詳細な観察が可能です。また、NBIと呼ばれる狭帯域光観察により、がんの表面にある異常な血管を認識しやすくすることが可能です。さらに拡大ズーム機能を搭載した内視鏡スコープを併用して、がんの微細な表面構造や血管構造をリアルタイムに詳細な観察を行うことで数mmの微小ながんを発見することも可能です。院長はこれまでに多くの早期胃がんの内視鏡診断や内視鏡治療に携わってまいりました。これまで培ってきた応用技術を活用し、これからも早期発見・早期治療につなげていくことに少しでも貢献できればと考えております。また、胃カメラ検査は受けたことがなくて何となく不安、怖そう、検査を以前受けたことがあるがつらくてもう嫌だという方には、鎮静剤を用いて、楽に胃カメラ検査を受けていただくことが可能です。
 もし早期胃がんが発見されたら、内視鏡治療で根治することが可能です。当院と連携している早期胃がんの内視鏡治療実績が豊富な専門の医療機関をご紹介しています。早期胃がんでも腹腔鏡下手術を検討すべきケースや進行胃がんの場合でも、当院では胃がんの外科的手術ないし集学的治療の実績が豊富な専門の医療機関をご紹介しています。
 早期発見・早期治療を合言葉に、まずは必要な人に胃カメラ検査を定期的に受けていただくことが、その人にとってよりよい結果に結び付くと私は信じています。そのためには、いかに患者さんがつらくなく、楽に内視鏡検査を受けられるようにするためにはどうしたらよいかを常に考え、患者さんの声に耳を傾けることによって、当院の医療サービスが日々進化・成長していけたらと思っています。胃カメラ検査に苦手意識を持たれている方にも当院では患者さんのお身体を最優先に考えた検査を行っておりますので、どうぞ安心してご来院ください。

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