ピロリ菌

ピロリ菌とは

ピロリ菌ピロリ菌とは、胃の粘膜の中に存在するらせん状の細菌のことで、正式名称はヘリコバクター・ピロリと言います。日本では幼小児期に感染が成立し、感染ルートは主に家族内感染です。近年は公衆衛生上の改善によって、ピロリ菌の感染者数は人口の35%程度まで減少傾向にあります。
ヘリコバクター・ピロリ学会ガイドラインでは、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、胃過形成性ポリープ、機能性ディスペプシア(ピロリ関連ディスペプシア)、胃食道逆流症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、鉄欠乏性貧血がピロリ菌と関連しており、いずれに対してもピロリ除菌を強く推奨しています。
胃の中にピロリ菌が感染すると、胃の粘膜が炎症をきたし、やがて胃粘膜の萎縮を生じ、慢性胃炎をきたします(萎縮性胃炎)。一番重要なことは、この胃炎が発生母地になり、胃がんが発生することです。日本の胃がんの99%はピロリ感染が原因ですので、できるだけ早い段階でピロリ菌を除菌できれば、胃炎をほぼ生じずに、将来の胃がんの発症リスクを限りなく少なくすることもできます。また子供を持つ親になる前にピロリ除菌をしておくことは、子供ができてからの家族内感染を防ぐことにもつながります。胃がんの発症率が高くなってくるのは50歳前後からですが、70歳以上のピロリ除菌でも胃がんの発がん率低下に有効であったと報告されています。ただし50歳以上では胃粘膜萎縮の進行によりピロリ菌が自然消失している例もあります。



除菌治療

ピロリ菌は、2種類の抗生物質と1種類の胃薬を1週間内服することで除菌することが可能です。除菌後2か月たってから尿素呼気試験による除菌効果判定を行います。除菌治療の成功率は約90%ですので、除菌が不成功だった場合は、抗生剤の種類を変更し、2回目の除菌治療を行います。2回目の除菌治療の成功率は約95%です。除菌後も胃がんのリスクはありますので、年1回の定期的な胃カメラ検査が大切です。

ピロリ菌感染検査

胃カメラ検査胃カメラ検査の際に胃の組織を採取して行う検査と、それ以外の検査方法に分けられます。また、保険診療として除菌治療を受けるためには、胃カメラ検査による確定診断が必要となります。
当院では、患者さんの状況に応じて検査方法を選択しており、1種類ないし2種類のピロリ検査を用いて診断します。

胃カメラ検査時に行う感染検査

ピロリ菌の有無を確認するため、胃カメラ検査の際に胃の組織を採取します。
*胃薬を服用中の場合は、検査精度が下がるため、実施できません。
*抗血栓薬を2種類以上服用している場合は、生検時に出血が止まりづらくなるため、実施できません。

迅速ウレアーゼ試験

ピロリ菌が作り出す酵素ウレアーゼという尿素を分解する特徴がある酵素を利用します。具体的には、胃から採取した粘液を特殊な反応液につけ、反応液の色の変化からピロリ菌の有無を判定します。

鏡検法

この検査では、胃から採取した粘液に特殊な染色をして、顕微鏡でピロリ菌の有無を確認します。

培養法、薬剤感受性検査

この検査では、採取した胃の粘液をすり潰し、ピロリ菌が発育できる環境下で5日程度培養し、ピロリ菌の有無を判定します。

胃カメラ検査以外で行う検査

尿素呼気試験(UBT)

 ピロリ菌感染検査の中で最も精度が高いと言われています。具体的には、患者さんに専用の検査薬を服用していただき、吐き出された息を調べてピロリ菌の有無を判定します。
 一般的なクリニックや病院ではピロリ菌の検査は外部の検査会社へ依頼するため、検査結果が判明するのに数日かかります。当院は胃腸専門のクリニックであり、院内に尿素呼気試験の専用検査機器を導入しています。検査後2分で結果が判明しますので、患者さんは何度も来院しなくて済みます。

抗体測定法

ピロリ菌に感染すると菌に対する抗体が体内に作られるため、この検査では血液に存在する抗体の有無を調べます。

便中抗原測定法

便中のピロリ菌の有無を調べます。

ピロリ菌感染検査の
健康保険適用

保険適用となるためには条件があり、①医師によって慢性胃炎と診断されたこと、②胃カメラ検査でピロリ菌の感染が確認されたこととなります。したがって、胃カメラ検査を受けずにピロリ菌の検査や除菌治療だけを受けることはできませんので、予めご了承ください。

半年以内に人間ドッグなどで胃カメラ検査を受けた方へ

半年以内に人間ドッグで胃カメラ検査を行い、慢性胃炎の診断を受けた場合、保険適用となります。また、この検査で感染が確認された場合、除菌治療についても同様に保険適用となります。

除菌治療の流れ

1薬剤の服用

 2種類の抗生剤と1種類の胃薬を1日2回朝夕食後に1週間服用します。抗生剤の影響で腸内細菌叢のバランスが乱れ、下痢になることがあるので、整腸剤も一緒に処方しています。
 お薬の副作用は、アレルギーなどの重篤なものは極めて稀で、下痢、胸焼け、味覚異常、じんましんなどが時折現れる程度ですが、一過性のことがほとんどです。治療中に上記以外も含め何か体調の変化があった場合は、すぐに当院へご相談ください。

起こる可能性のある副作用

  • 味覚異常(約30%)
  • 下痢(約13%)
  • 蕁麻疹(約5%)
  • 肝機能障害(約3%)
  • アナフィラキシー(重篤なアレルギー。息苦しさ、重篤な薬疹など):極めて稀

2除菌判定

当院では、除菌終了後2カ月後に尿素呼気試験によって除菌効果判定を行っています。
尿素呼気試験当日は、食事を食べずにお越しください。

3(1回目で除菌不成功の場合は)2回目の除菌治療

1回目の除菌治療で、約90%の患者さんが除菌に成功します。また、1回目の治療で除菌できなかった場合でも、2回目の治療を受けることで約95%の患者さんは除菌に成功します。なお、2回目の治療では1回目とは別の抗生物質を使用します。

42回目の除菌判定

1回目の除菌判定と同様に、除菌治療後から2カ月目に尿素呼気試験による除菌効果判定を行います。2回目の治療でも除菌できなかった場合、3回目以降の治療をご希望される際は自費診療となりますので、ご了承ください。

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